06/9/17ビックベアーズ戦

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■9月17日ビックベアーズ戦

 予感はあった……。
 3連休ど真ん中の野球。メンバーは9人ジャスト。
 しかも、WINS唯一の本格野球人・本木もいない、シーズン終盤の今、三冠王にもっとも近づいている男・四番マツもいない、そのマツと打撃部門でデッドヒートをくり広げているスターウォーズ軍団総帥・大久保もいない。
 ついでに言えば、監督候補・杉本もいない(ついでかよ……)。
 そんな、いってみれば小粒なナイン、小WINSでの野球。
 はたから見れば「キャプテンもエースもいるじゃないか。どこが小粒なんだ」ということにもなるかもしれないが、WINSの場合“キャプテン”“エース”といっても、そのニュアンスは一般チームとはかなり異なる(詳細省略)。
 しかし前夜、その小粒なメンバー構成をながめつつ、エースはこう思っていたので ある。
 「あんがい、こんなメンバーが健闘するかも」
 そして当日。
 グラウンドにつき着替えをすませると、ゴローがいった。
 「宮田くんが来てないんスよね〜」
 さっそくキャプテンのケータイを使用して連絡。“ケータイを持ったサル”ことゴローが叫ぶ。
 「え〜っ! で、どうするのよ! どうするのよ、宮田くん! あとはキミの気持ちにまかせるよ!」
 ガチャ。
 乱暴に電話を切る、いやケータイなので乱暴に切ったつもりになるゴロー。
 「今、どこ?」
 のんびりかまえたキャプテンが聞いた。
 「家ですよ〜!」
 宮田の家から球場までは、コサッキー車(時速270 キロ)なら10分ほどだが、電車等を用いた場合、1時間半はかかるだろう。
 無理だ。すぐさまエースがビッグベアーズのプレイングマネージャー堀井氏に詫びを入れにいく。
 「すんません、ひとり寝坊で来れません! ……えー、つきましては、ライトを貸していただけないでしょうか」
 「あ〜。じゃあ、うちの新人を練習に使っていい?」
 意外にあっさりオーケー。さすがベテラン監督、草野球の酸いも甘いもすべて経験済の余裕である。
 てことで、小粒な上にひとり足りない状態でプレイボール。
 1回表。この夏、どうにもからだのキレが悪い、エース。なにしろ素振りをするのも億劫なくらいの体の重さ。これはやはり歳なのか、ただの夏バテか、それともなんか悪い病気? いきなり先頭打者に四球を与え、続く堀井監督にも右中間にポトリと落ちるヒットを打たれピンチ。
 とにかく詳細は忘れてしまったが、この回2点献上。
 しかしその裏の小WINSの攻撃がみごとだった。
 まずは先頭、確かな野党が、特殊バット効果もあるのか、あわやホームランというフェンス前の樹木直撃のシングルヒット。続いて、どうやら現在打撃絶好調らしいカズシゲも鋭い当たりを放つ。さらに270キロ男コサッキーも、本来の調子を取り戻したのか快音。
 3連打であっという間に同点。
 そして、本日四番に入ったエース。エースで四番。長いこと野球をやっていれば、こんなこともある。長生きはするもんだ。
 一塁ランナーのコサッキーとアイコンタクトでまずは二盗をうながす。ショートゴロの間に、さらに三進。
 ショートゴロで二塁ランナーが三塁に進むのが、草野球とメジャーのいいところである(メジャーも「ショートゴロはGOだ」と誰かが解説でいっていた)。
 そして五番・村ケンの内野ゴロの間にコサッキーがホームイン。
 逆転だ。
 なんて素晴らしい、イッツ・ア・スモール・ベースボール・ワールド。
 続く2回もエースがやや制球を乱すが、相手チームがひっかけたサードゴロを確かな野党が軽快にさばき、さらにこの日のファーストがカズシゲであるということが逆に功奏し、久しぶりの完璧ノーバウンド送球を心掛け、3回以降は無失点。
 わがチームはといえば、3回には四球で出たコサッキーが二盗三盗。四番エースのサードゴロの間にナイスランで生還という、またまた無安打小野球。
 しかし打点をあげたエースが「四番としてなんとか最低限の仕事はできました」とコメントするも、どこかで妙に低い声が「最低限、じゃなくて最低の仕事では」。
 まあ、いい。
 圧巻は4回。四球で出たゴローがいつものように駄走りに駄走って、あやうく三盗アウト!? タイミングは完全にアウトだったが、サードコーチャーに入っていたエースが大きく「セーフ!」のゼスチャー、コサッキーか確かな野党かお父さんか、とにかくみんなが「また(駄走りアウト)かよ!」の微妙な審判揺さぶり野次。
 人のよさそうな審判は数秒ちゅうちょしたあとに「セーフ」のコールだ。
 なんという全員小野球。
 そして次打者、お父さん=山崎が渾身のスイングで大レフトライナー。タッチアップしたゴローがここは余裕のセーフで5点目。
 終わってみれば、わずか6安打で11対3の快勝。
 一二塁間のゴロをファーストのカズシゲが飛び出して捕り、素早くカバーに入ったセカンドお父さんにトスしてアウトという驚愕のシーンもあった。
 「いや、あれはオレが捕ろうとしたの。『なんで捕るんだよ〜、カズシゲ』って叫んだんだもん。捕ろうとした勢いでファーストまでいっちゃったんだよ〜」
 と謙遜するお父さん。真相は神のみぞ知る、だ。
 村ケンも捕りにくいセンター正面のライナーを2つほど好捕。
 入団当初は今ひとつ精彩を欠いていたコサッキーも快音が出て、守備も軽快、最終回はマウンドに立ち、敵の追撃をあっさり3人斬りだ。
 頼るべきものを欠いたがゆえに、「自分がやらねば」の意識に目覚めたかのような小WINSのイッツ・ア・スモール・ベースボール。
 えー……、あの妙に低い声の人は何したっけ?
 なんか、イニング交代のたびに、あわててレガースをつけていたような気もするのだが、それはなぜだったんだろう。
 試合後、グラウンドの脇で着替えていると、人のよさそうな審判がエースに近寄ってひと言。
 「あのスローボールが効果的だったよね〜」
 あのって、どの!? 全部なんですけど……。
 「水島新司さんがそういう投球。球は遅いけどコントロールがいいから、野手のリズムもよくなるんだよね」
 47歳にして、草野球界の重鎮と並び称されるようになったのか、オレ……。
 というか、まさか同じ歳くらいに思ってないですよね、審判さん。
 ちなみに試合後の一次会がはじまってから到着した宮田。その姿勢は認めるが、ユニフォームもグラブもバットも入らない、電車の車掌ばりのちっちゃなバッグ1個で来たのはどういうことなんだろうか。

(ペン/本紙エース)

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