14/8/24 ビッグベアーズ戦

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■8月24日(日)ビッグベアーズ戦

 前回、8月16日(土)のブーザーチンパンジー(酔どれお猿さん?)戦に味をしめた事務局Gが、調子こいてやってしまった。
 ブーザーチンパンジー戦は、試合の直前までわがWINSの人数は7人。にもかかわらず、勤務する工場のお盆休みのあいだになんとか野球がしたいGは、人数不足のまま試合を強行ブッキングした。
 しかし、人材派遣の名手・島田選手などの尽力により、最終的に11人の選手が集合、しかも若い助っ人やWINSドラ1・本木久々の参戦もあり、けっこうな強力メンバーとなり、激戦の末、4−1で試合をものにした。
 その興奮もさめやらぬ、Gの働く工場のお盆休みも明けやらぬ次の日曜日、またも試合が組まれた。
 今度は、なんとWINS参加者5名。

 「どうしましょ〜」
 週末、電話で泣きつく事務局G。
 「どうしましょうもクソも、5人でどうやって野球やるんだよ!!」
 「でも、もう断れませんよ〜」
 「あいつとかヤツとか、まだ連絡が来てない連中はどうなんだよ」
 「いや〜、返事が来ないんッスよね〜。みんな忙しいのかな〜」
 「じゃあ、いつも助っ人をお願いしているコモドアーズ関係は?」
 「それが、コモドアーズはその日べつの試合なんスよ〜」
 「なにっ……」
 進退きわまった事務局Gとエース古矢(現在監督代行)。
 なにしろ事務局G、チームのホームページ制作や試合ブッキングなどかいがいしくやるわりに、学生時代の友人知人の少ない、というかひとりもいないのではと思わせる、人脈皆無の寂しい男なのだ。
 WINS20年超の歴史のなかで、友人知人を試合に連れて来たのは、たった一度。それも、チームメイトは誰も覚えておらず、本人だけが「一回連れて来ましたよ〜、トモダチ!」と主張する、まさにレジェンドなのである。
 一方のエースもなにしろ55歳。友人知人はそこそこいるものの、ふつうの人はその年代ともなると、土日は会社の部下を自宅に招き、ホームパーティーなどをやっているはずなのである。
 そういや以前ちょくちょく対戦した、高校の同級生が率いる歯科医チームも、すっかり試合を申し込んでくれなくなった……。
 試合はあさっての日曜日。
 「しょうがねーな。いざとなったら、5人でやるか。ピッチャー栗山くん、キャッチャーG(ゴロー)、ファーストがオレ、MASAをショートにでもして……あとはカトーさんに適当にじっとしていてもらえば、なんとかアウトは取れるだろう。とにかく、まだ連絡が来てないヤツにプッシュよろしく」
 「あ〜、俺、明日の土曜日は朝から工場で、連絡とかできないんスよね〜」
 そこで電話は終わった。

 こんなとき、みなさんならどうするだろう。
 1 5人で野球をやる
 2 自分も試合に行くのをやめる
 3 とにかく誰かに連絡する
 エース古矢の頭に、ふと「2」がよぎった。
 いやいや、何を考えているんだ。
 某大物クライアントの仕事を途中で放り出し出張先の大阪から朝帰りで紅白戦に参加したあの日。
 母親の法事を「野球の試合があるから」と延期させたあの日。
 人数がそろわない試合当日の小雨の朝、新宿のホームレス2人を駒沢球場までタクシーで連れていったあの日(ナインにはホームレスのように見えたようだが、2人は新宿の飲み屋のマスターオサムと常連客サトシだった)。
 そんなことが走馬灯のようによみがえり、おもむろに一斉メール。
 タイトルは「野球の試合の助っ人要請の件」。
 相手は……。
 困ったときは女である。
 ただし、女といってもやはりグローブくらいは持っていてほしい。ぐっと数が絞られる(最初から絞られているのでは)。
 「あさって試合があるんだけど、うちのチーム5人しかいないんだよ。このままだとオレとG(ゴロー)の草野球人生が終わってしまうんだ。もし、もしも、あなたのような美人野球選手が来てくれたら、オレたちもうれしいし、なにより相手チーム、そして審判、さらには観客たちが喜ぶと思う。どうか過去のことはすべて水に流して、助っ人に来てはくれまいか。このとおり」
 どのとおりなのかわからないが、いやー、ダメもとでメールしてみるもんですなあ。
 メールをしたふたりのうちふたりが「そんなに言うなら……。でも、助っ人にはならないと思いますよ」と快諾。いや、そのうちのひとりは「じゃあ、うちの旦那と、もうひとり女の子を連れて行きます」と、つまり2打数4安打!?

 そんなこんなで、ようやく試合がはじまった。

 助っ人に来てくれたのは、東京メッツ水原勇気投手と見まがうばかりの性別の、のもちん選手、ユダ選手、アスカ選手。そして、のもちんの旦那、ケンゴロ選手。
 ちなみに、水原勇気メッツ入団時の岩田鉄五郎の年齢は52歳だか53歳。今のエース古矢より年下だった(WINSミニ知識より)。
 1回表、長年のライバル、ビッグベアーズの攻撃を栗山投手があっさり無失点に抑える。なぜか試合前からいつになく元気だったエポック社野球盤型外野手カトーさんが、センターフライをほぼ立ち位置のままがっちりキャッチしたことも特筆しておこう。
 しかし、裏のWINSの攻撃もあっさり三者凡退。
 この日人生二度目の経験(野球)というアスカ選手を二番に挿入した、監督代行采配が失敗だったか……。
 なにしろこのアスカ選手、だいぶん以前だという前回の試合の打席で、バットを持ってホームベース上に立ち、審判に「そこじゃないですよ」と注意されたという初体験をした女なのだ。
 「そこじゃないですよ」
 あの『電車男』ドラマ版(ふる……)で伊東美咲が言った名台詞と同じだ。初体験のときに言われやすい言葉ナンバーワンともいえるだろう。
 あとで聞くと、理由はこうだった。
 「だって野球って〜、みんなベースの上にいるか、ベースを踏んでるじゃないですか〜」
 言われてみれば、たしかにそうだ。塁に出た選手は、まずベース上に立つ。野手も送球を受けるときは、ベースを踏む。
 グラスの底に顔があってもいいじゃないか!! バッターがホームベースを踏んで立ってもいいじゃないか!! ……なんだかわからない!!
 岡本太郎ならそう言ったかもしれない。
 しかしホームベースというものは投球が通過すべき空間の位置を示すものであって〜、形はほかの塁と違って白いブリーフ状であって〜。
 「どうして古矢さんの発言には、必ずセクハラが入るんですか!!」
 栗山投手からのツッコミ。
 とにかくそんな、野球に対しての哲学的な問いを抱えてのぞむ女子選手アスカ。
 二番打者でよかったのか……。
 2回表のWINSの守りでは、みんなが予想していたことが起こった。
 まあ、ヒットはそこそこ打たれるだろう。フォアボールも、まあ、ある。そして、エラーも。
 もちろん、野球にエラーはつきもの。
 詳細は都合により省くが、一挙に大量7失点。
 その裏、WINSも先頭の栗山選手が四球を選び、そこからユダ選手の結果犠牲バントになるピッチャーゴロ、のもちんの内野安打などあり1点返す。
 3回表は栗山投手が踏ん張り、またも無失点。いいぞ。
 その裏、MASAが会心の当たりを飛ばすが、ベンチ一同「3つ、3つ!!」と塁を欲張り、アウト。1−7という大差で、このがっつきはいただけなかった。
 4回表にも失策がらみで3点を奪われ、1−10で迎えた4回裏。
 サード強襲安打で出塁したケンゴロ選手を栗山選手が二塁打で返し、2点目。さらに続くチャンスで、打席には本日の五番、クリーンアップの一角をになうユダ選手。
 前々日の助っ人要請には「5年くらい前にぎっくり腰になって、今はチームの試合にもほとんど出てないし、立ってるだけでいいなら行きますよ」と応えていたのだが、その言葉が嘘だったかのように……。
 無死二塁。ビッグベアーズ先発イチローくん(仮名)の投じたストレート。やや高めにきたその速球を、伸び上がるようにしてセンター前に豪快に弾き返したのである。
 さすが、経験に裏打ちされたみごとなバットさばき!!
 事務局Gも、もはや発射寸前だ(ちなみにGのバットは根本が太いツチノコ型)。
 これで3対10。
 5回はお互いに点を取り合い、5−12で迎えた6回裏に、この日最大の見せ場がやってきた。
 先頭ののもちんがサードゴロで一死。カトーさんがしぶとく四球を選んだものの、さきほど発射しかかったG(ゴロー)が三塁ファウルフライであえなく昇天。
 2アウト1塁。
 これまでか……。
 しかし、ここまで内野ゴロ2つとまったく当たっていないエースが、なんとか選んで出塁(スコアでは死球となっているが四球だったような)、二死一二塁のチャンス。
 でもなあ、セカンドランナーはカトーさん。これでは盗塁もできないし、1ヒットでは返ってこれないよなあ。
 そう思っていたら、次打者MASAにデッドボール。
 5対12という状況で、相手投手は何を動揺しているのだろう。
 二死満塁。ホームランが出れば、たちまち9対12、いけいけドンドンだ。
 そこで出ました! 打席には「そこじゃないですよ」のアスカ選手。本日の成績は、空振り三振、ピッチャーゴロ、空振り三振。
 うーん……。
 だが、二度三振とはいえ、バットには何度か当たっている。カトーさんによる打撃指導もひんぱんに行われていた。
 「カトーさん、自分ができないことを教えてるもんなー(笑)」by某選手。
 いや、いいんです。自分のできることしか教えられないなら、巨人・村田真一打撃コーチなんて、長野や阿部や勇人や由伸にコーチできるわけがありません。
 二死満塁、打席にアスカ選手。
 セカンドランナー、エース古矢は思った。
 「ここはまあ、相手ピッチャーも疲れているし女子相手だと投げにくいし、フォアボールか、そうでなけりゃぼてぼてのゴロでエラーを誘って、次の打者のケンゴロと栗山選手につなげることができれば。なんとかバットにボールを当ててくれ、アスカ……」
 カッキーーーーーーン!!
 エース古矢を夢想から覚ます快音が、四谷外濠公園野球場の夜空に響いた。
 「えっ!!」
 グラウンドにいた両軍ナインが、画面いっぱいのアップになって叫ぶ。
 鋭いピッチャー返しの低いライナーがセンターへ飛んでいく。
 一瞬、何が起きたかわからなかったのは、打った本人だ。
 「アスカ!! 一塁の方角に、一塁のあの四角いベースに向かって走るんだ!!」
 奇跡ともいえる2点タイムリー。
 アスカ、人生二度目の初体験だ。
 「初めてで何がなんだかわからなくて、どこにどんなふうに飛んだかも見てなかったんで、ちゃんと見てみたいです〜」(試合後のアスカ選手談)
 「そうか、どんなふうに飛んだか、ちゃんと見てみたいんですか、アスカちゃん! ぎゃははははは〜」
 ぴゅっ。
 その晩、事務局G(ゴロー)は、自分で自分のものが飛んだ様子を確認したとかしなかったとか。
 とにかく、WINSベンチはお祭り騒ぎ。
 けっきょく試合は8−15の大敗ではあったが、助っ人全員安打。ヒットがなかったのは、オリジナルWINSのGとエース古矢のふたり。まあ、Gことゴローもこの暑い中、ひとりでキャッチャーという過酷なホジションを守りきったことは、ほめてやってもいいだろう。
 確実だった本塁タッチアウト場面でのたるんだ対応(本人曰く「相手走者の足がニュルニュルニュルって伸びてきたんですよ〜」)、栗山投手がせっかく三振を取ったのにそれを逸らし、それだけならまだしも一塁へのダラダラ投球で振り逃げにするなど(本人曰く「ファーストの古矢さんが落とすからセーフになるんですよ〜」)、随所に大きなマイナスポイントはあったにしても……。
 その晩。
 試合途中にあらわれた謎のサングラス男、「みんな疲れてるんだから、代わってやってよ〜」の要請にも「昨日の夜から何も食ってないんですよ〜」という謎の言いわけで試合参加を断固拒んだ人物(元どグサレ球団監督)も交え、四谷しんみち通りの夜はいつにも増してにぎやかだった。

●ペン=本紙エース古矢


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