18/5/26 ビッグベアーズ戦

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■5月26日(土)ビッグベアーズ戦

「うーん、石原くん、まだ来ないのかー。あー、どうしよう、まいったなー……」
 試合開始まであと20分くらいだろうか。WINS監督杉本は、球場の金網の外にある照明灯のコンクリートの土台に腰かけ、この2週間ほどあたためていたスターティングメンバーを記したメモに目を落としながら、そうつぶやいていた。
「そんなに悩まなくても、ゴローがネットで助っ人の滝村さんと篠田さんを呼んでくれたから、人数足りてるじゃん。石原くん、いつも遅刻してくるし」とエース古矢。
 エースはいつものんびりしているように見えるが、心のうちでは「今季のWINS、結成28年目にして最大の危機を迎えているのでは」とイチモツの……いや、一抹の不安を抱いている。
 なにしろ、5月も終わりを迎えるというのに、わずか3試合しかできていない。例年なら、すでに5〜6試合は消化しているだろう。ん? 大差ないか? いや、印象としては「まるで試合ができていない」感じだ。
 これには、WINS自体の人数不足、あまりの弱さゆえ相手に敬遠されているとおぼしき試合申し込みの激減、2020年の東京オリンピックに向けての球場不足、ここ数年続くアベアソースガの国民をなめきった答弁(攻めきれない野党もマヌケすぎ……つまり出来レース?)、試合後の宴会のお会計の思いのほかの高額化などが影響していると考えられる。
 しかし、今日は、ようやく冬眠から目覚めた待望のビッグベアーズ戦だ。
 今季まだ一度も勝利を挙げていないWINSにとって、これ以上ない相手といっても過言ではないといえなくもなくなくなくないかもしれない。
 さらに本日は、ちょっと前にWINS掲示板にて「一般の女性」との結婚を発表したばかりのTOMこと酒寄選手が、はるばる茨城から参戦という慶事もある。試合前日には、WINSのお祝い係も兼ねるゴローとエースがメールで相談、お祝い品を用意して試合に臨もうと決めていた。
 早々に球場到着の助っ人、滝村さん&篠田さん。篠田さんはWINS初参加だが、滝村さんは助っ人としても二度参加、試合相手の助っ人としても一度WINSと試合をしたことがあるという。
 「あれは……猿江の球場でしたね。自分は『土曜会』というチームで。たしかWINSのピッチャーのかたが全然ストライクが入らなくて……」と滝村さん。
 「あーっ! ブクローが先発したときだ!」とゴロー。
 そうだ、あれはブクローこと島袋投手のお別れ登板。
 この年、その土曜会戦で合計7先発、登板数も14を数えたWINSの堂々たる、投手陣二枚看板のひとりブクローが、夏の真っ盛りに実家のある沖縄に帰るという。理由は、沖縄にひとり残っているお母さんと一緒に暮らすためだとか、都会のゴーヤチャンプルーの味にもうがまんならないせいだとか……。
 土曜会戦は、4回で12四死球というブクローの乱調もあり、そのブクローの満塁ホームランなどで追い上げたものの、11対16の敗戦。
 「個人的には、あらためて野球というスポーツの難しさと楽しさを知ることができた日だった。次回、WINSの試合に参加するときには、成長した姿をお見せすることを約束します」
 その言葉を残して、二枚看板のひとりは南の島に旅立った。
 ……まだ今日の試合ははじまらないのか。
 久しぶりの『ヨンスポ』、前置きが長いのは相変わらずだ。
 そこに石原選手到着。
 「ああ、よかったー」と、笑顔の監督。
 試合前にTOM選手への結婚祝い贈呈式。これで、WINSで一度も結婚をしたことのない選手は、59歳のエース、51歳のゴロー(素人童貞、完全プロ志向)、40代の大久保軍団ふたりなど……たった数人になってしまった。いや、たったではなく、多いのか?
 ようやく試合がはじまった。
 先発は、前年の紅白戦以来、5か月ぶりに投げるエース古矢。そのせいもあってか、いきなりヒット、二塁打と連打を浴び1点献上。さらに四球が2つ続く。無死満塁。
 「前進守備! ホームゲッツーでいこう!」ベンチから監督が叫ぶ。
 そこに絶好のサードゴロ! 本日、監督がもっとも期待していたと思われる石原選手の前にボテボテのゴロが転がった。難なく捕球した石原選手が、キャッチャーのゴローへ送球。
 アウト!
 ゲッツーこそならなかったが、上々の結果。しかし、なおも一死満塁。「ここも同じで!」監督の指示が飛ぶ。
 そして、またしてもボテボテのサードゴロ! 前に出た石原選手がショートバウンドで捕球し、その勢いのまま本塁へ投げる! が、送球は大きくゴローの頭上を通過。勢いあまったか。ここで1点が入り、さらに一死満塁。
 そこからよく覚えていないが、ビッグベアーズのスコアブックをたどると、さらにサードエラー、ショートエラーなど重なり(残りのアウトは投ゴの2つ)、けっきょく初回表に7失点。
 あまりこうしたことは言いたくないが、一見投手の失態に見える7失点だが、自責点は1であるということを、のちのちの野球人たちのために、しっかり文書として記録に残しておきたいと思う(これは、前の試合であるヘリオス戦のゴロー投手についても言える。ゴローの場合、もしかしたら自責点はゼロだったかもしれない)。
 「7点取られたけど、全然返せる点差だよ!」WINSナインが叫ぶ。「えっ、そうなんですか……?」半信半疑の助っ人某選手。まあ、無理もない。
 しかし、勝手知ったる、まさにビッグベアーズの台所事情。期待通り先発のイチローくんが四球を連発。新婚初夜……ではなく新婚初打のTOM選手が、次打者村上1号に動画撮影を指示する中、四球を選び、新婚初打点。これで1−7。
 さらに村上1号が四球を選び、2−7。MASAこと小笹選手のサードゴローは相手のエラーを誘い、たちまち3−7。続くゴローも四球を選び、押し出し。4−7。
 あと3点に迫り、まだ一死満塁。
 ここで打席に向かうのは、生きて年末を迎えれば還暦となるエース。それまで制球の定まらなかった相手投手が、サービスなのか、なぜか内角へ絶好球を投じた。
 カキーン! 快音を残して打球はサードのグラブの先を抜け、レフト線に転がった。ふたりが返り1点差! 
 続くカトー選手はピッチャーのエラーで出塁。チャンスは続くが、次打者は監督杉本。一塁ランナーはカトーさんだし、最悪、ふつうに内野ゴロゲッツーもあるか……。WINSナインおよび正岡子規記念野球場に集まったギャラリーからため息がもれたような気がしたのは、エースだけだっただろうか。
 そのエースが叫ぶ「監督ー! 一発頼むよー、冥土の土産に!」
 「その台詞、ここ3年毎年聞いていますよ」石原がつぶやく。「ありゃー、同じギャグを3年も……。オレも焼きが回ったか」とエース。「というか、監督がしぶといんじゃないっすか」とゴロー。
 しぶとい監督が、持ち前のバットにボールを乗せる、長距離砲特有の打撃術で(当たれば)、レフトに大きな当たり! ついに同点!
 続く島田選手もショートへ鋭いライナーを放ったが、珍しくビッグベアーズ監督のホリイ選手が好捕。飛び出した古矢がサードに戻れず併殺となった。
 2回表もいろいろあったが、なんとか2失点に抑え、WINSの攻撃。
 先頭の石原がヒットで出ると、続く滝村選手のサードゴロは野選となり無死一二塁。それぞれに盗塁も決め、無死二三塁の絶好機に四番の助っ人篠田選手がレフトフェンス直撃の2点タイムリー!
 続く酒寄が捕飛に倒れたものの、村上1号のファーストゴロの間に1点入り、勝ち越し。さらに、小笹がレフトにあわやホームランというフェンス直撃のヒット。ゴローも相手失策で続き、一死一二塁か一三塁(どっちだったかな)。ここでエースがセカンドとショートとセンターの間に高く上がる、まさに流行のフライボール革命な打球を放つ。
 相手野手は誰も取れず、小笹が返り2点勝ち越し。
 3回からは滝村選手が登板、鋭く落ちるスライダーもしくはフォークが冴え(走者は振り逃げのひとりだけ)、スコアボードに両軍通じて初めて「0」の数字が記された。
 WINSもおつきあいで3回裏は無得点。4回、滝村投手の好投は続くが、味方エラーがあり11−10と1点差に迫られる。
 やばい。
 しかし、今日のWINSは少し違った。4回裏先頭の酒寄が、動画撮影指示をやめた第3打席で、新婚初ヒットを放ち、小笹の四球もあって、二死二三塁の場面で、打席に本日2打数2安打3打点と、ジャイアンツ岡本ばりの覚醒!? を見せているエース。
 そして。えええっ!
 誰もが我が目を疑う、あざやかなセンター前ヒット!
 3打数3安打5打点。
 いやー、長生きはするもんですなー。
 続くカトーも一二塁間を破るヒットを放ったが、送球が乱れる間に三塁を陥れようとしたエースがタッチアウト。うーん、先ほどの併殺といい、自分の気持ちと脚の運びが一致していないようだ……。
 その後は、お互いに小刻みに点を入れたが、5回裏の篠田選手の今度はセンターのフェンス直撃のタイムリーで勝負あったという感じだろうか。
 15対13。スコアとしては辛勝だが、裏の攻撃でもあり、快勝と言ってもいい。
 ブクローは、南の島でこの『ヨンスポ』を読んでいるだろうか。成長したのか、ブクロー。
 新婚酒寄選手は、「嫁さんの写真ないの? ないなら、せめて名前だけでも教えてよー、お願いだから教えてよー」」というナインの懇願を聞き入れず、なぜか「名前は、また今度」と期待を持たせたまま帰宅。
 ちなみに、結婚祝いは西武池袋店で買ったユナイテッドアローズのバスタオル。新婚のおふたり用に、白地に美しい青(紺だったか?)のストライプのものと、同じく美しいグレーのストライプの計2枚。
 もしかしたら、風呂上がりにバスタオルを巻いている新婚ふたりの写真が、近々WINS掲示板にアップされるのだろうか。あっ、こんな発言も今は「セクハラ」と言われてしまうのか。
 一次会を終え、電車に乗り込んだエースとゴローは新宿で下車、「♪言いたいセクハラも言えないこんな世の中じゃ〜ポイズン!」と合唱しながら、2軒目の酒場を目指し、どこをどうさまよったのか、翌朝の6時には、歌舞伎町の中華料理店で炒飯&ラーメン、ちゃんぽんをつまみに、まだビールを飲んでいた……。

●ペン/エース古矢

追伸
 気になる一次会だが(誰も気にしてない?)、今季初勝利にもかかわらず、参加者はゴロー、エース、村上1号、MASAこと小笹のわずか4名。しかも、MASAは店に降りるエレベーターを待つ間に「あー、ねみー!」とあくびを連発し、エースとゴローに「飲む前に眠いとか言っているバカいるかよ!」とビンタで闘魂注入される始末だ。
 しかし、その闘魂注入が効いたのか、飲みはじめるといつものようにテーブルをバンバン叩いて盛り上がる、小動物のようなMASA。入店後生ビール4つをすぐ頼み、生ビールが届く間にメニューから麦焼酎『神の河』のボトルをチョイスし、「エース、これでいいですか」、さらに女店員がビールを持ってきたときに「『神の河』のボトルと……ソーダを」と、坂本から吉川さらに岡本へと転送される、流れるような6−4−3の併殺的注文を見せた、村上1号の働きも光った。
 これは先日のヘリオス戦のあとの東小金井『さかなや道場』で、調子に乗ってガツンと塩レモンサワー420円だとかを一杯ずつ頼んで、お会計に泣いた経験を反省しての行動だ。
 以上、追伸終わり。


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