06/2/18フライングバード戦

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■2月18日のフライングバード戦の試合経過

 はじめての相手とやる。心躍ることである。前夜、ほくそ笑みながら右手の人差し指から薬指まで、短く爪をつまんでおく。
 どんなテクニックを使ってくれるのか。回数は何回ぐらいイケるのか。どのくらい強いのか、どのくらい早いのか。
 相手は若い。はちきれんばかりの肢体を使って、見事な体技を見せてくれるだろうか。
「あ、ダメなんです。そんなに強く振ると、ワタシ、白く飛んでしまうんです」
 そんなことも言ってくれるだろうか。ズルル、ズルル…… zzzz。
 いけね、寝坊した。
 源氏名は飛鳥と…、いやチーム名はフライングバード。平均年齢二十代前半という、若鮎のような美女軍団、いや男だった。どんな指さばきでタマを弄んでくれるだろうか。
……やめよう。そろそろ試合が始まる時間だ。しかし私たちがくんずほぐれつ身体をマグワわせるベッド、いやグラウンドは誰かに使われている。今日は相互鑑賞プレイだっただろうか。そんなはずはない。
 プレイしているのはまだ子どもだ。児童福祉法に引っかかるだろう。いや親もいる。親子丼だろうか。
……やめよう。それどころではない。Gが相手と交渉を始めた。どうも双方とも自分が予約したと確信している。フロントの手違いだろうか。
 事態は二転三転したが、結局、私たちが使うことになった。開始時間は相当ずれこんだ。相手はじれていることだろう。じらせばじらすほど欲しくなる。これも手練れの…。
……やめよう、バカバカしくなってきた。
「一〇〇点を覚悟した」。試合後、エース古矢はちょろっと漏らした。年をとるとキレが悪くなる。そろそろアテントを用意した方がいい。
 相手は若い上に、野球経験者が多いとのこと。平均年齢は我々のおよそ半分か。身体の動きもよさそうだ。
 ナインの不安を背中に感じながらマウンドへ。「ままよ」と投じた先頭打者への初球。カツン。いきなり左中間に痛打される。我々はここ二子新地球場で青森深浦高校になるのだろうか。ひやり冷たい汗がつたう。
 しかし、幸いにして屈辱プレイにはならなかった。1点で押さえ切った。その後も小刻みに点を追加されるものの、大量失点にはいたらない。よし追撃あるのみ。
 しかし相手ピッチャーは左腕の本格派。背番号28が示すとおり、江夏ばりのフォームから鋭い速球がコーナーに決まる。ポツリとヒットは出るものの連発といかない。トシだ。もうヌカ六は無理なのである。
 途中、我々にも好プレイは生まれた。センター大久保の背走キャッチ、山崎の一、二塁間ヒット性の当たりキャッチ(も、一塁には投げられず)、マツのライトゴロ。
 そして特筆すべきは(と書けと某方面から圧力あり)、古矢のピッチャー強襲打キャッチだろう。バットに弾き返された球が一直線に古矢を襲う。コンマ何秒の間、グラウンドに戦慄が走った。
 パシッ! 死んだか?
 いや古矢は立っている。逆シングルにグラブを止めたまま静止している。ゆらりとその体が動く。グラブを顔の前に止め、ゆっくりと開く。ご開帳。球はそこにあった。
 アウト! 高らかな審判の声。
「これで生ビール5杯はいける」
 ベンチに戻った古矢は何度も漏らした。やはりアテントが…。
 7回を終わって散発三安打。スコア、7対0。完封負けである。
 しかしナインに沈痛な思いはなかった。むしろ善戦したと自身を誉める思いさえ湧いてくる。
 ワタシ、何度も「もうやめて」って言いそうになったんです。だって、若くてすごく強いんです。それにとっても巧いんだもの。でも、ワタシ、一生懸命しがみついたんです。もっとやれる、もっとして……。
……やめよう。もう夕陽が沈む。巷の灯りが我々を待っている。山芋を擂ったやつに生玉子でも入れてもらうか。

(本誌=杉本)

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