06/6/03男のコント戦

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■6月3日男のコント戦

 本日の相手は、わがWINSの「さわやかサラダ一家」若頭が、これは裏切りなの か二重スパイなのかただのフタマタなのか不明だが、最近所属することになったチー ム。
 当然、なのかどうなのかこれも不明だが、若頭サラダ良介はそちらのチームの選手 として出場である。
 チーム名は「男のコント」。
 相手さまのチーム名をとやかく言うことはしたくないが、はっきり言って「なんだ そりゃ」である。
 思えばオレたち、ずいぶんとそんな名前の相手との対戦を続けてきた。
 どグサレ球団。
 なんだそりゃ。
 チューナマヨッツ。
 なんだそりゃ。
 ボヨヨン。
 なんだそりゃ!
 しかし、じつはオレたちも人さまのことを言ってはいられない。
 チームが誕生して名前を決めるにあたって、エース古矢が主張した名前は「四谷カ フェテラス」だった。
 しかし、世の中はまだカフェブームには遠く、打ち合わせといえば新宿『談話室 滝沢』、終電がなくなったら喫茶『マイアミ』(コーヒーにバームクーヘン付き)、 そんな時代だったのである。
 四谷カフェテラスは早すぎた。
 あっという間に却下。WINS後楽園などの場外馬券売り場をイメージしてつけた 、現在の「四谷WINS」という可もなく不可もない名前に決まった、という経緯が あるのだ。WINSの新参者はよく覚えておくように。
 話が長くなったが、「四谷カフェテラス」「どグサレ球団」「チューナマヨッツ」 「ボヨヨン」、そして「男のコント」。
 ヒトがスポーツチームを作るにあたってそうしたネーミングをするというのは、つ まり「勝ち負けより笑い重視」。これしかない。
 そして、そんなチームを前にしたとき、あたりまえな球団名を持つチームは、こう 思うのである。
 絶対に負けるわけにはいかない。
 「絶対なんか絶対ないんだから絶対に言ってはいけない」というのは阿川弘之の至 言だが、そんなことはわかっていても、負けるわけにはいかないのである。
 とくに初戦は。
 初戦だけは絶対に負けてはいけない。2戦目からはぼろぼろにされようとも、とに かく初戦だけは。
 ようやく試合がはじまった(前フリが長い)。
 いつものように後攻をとり、マウンドにもいつものようにエース古矢が上がる。  先頭の左バッターがいきなりセンター前ヒット。続く打者の当たりはボテボテのセ カンドゴロ。しかしこれを二塁手が、いちばん高くバウンドしたところでみずからの からだをすっぽりその下に入れるという、高難易度のプレイをあえて見せヒットに。

 MASA〜!!
 三振でようやく一死(ひょっとしたらセカンドゴロと順番逆かも)をとり、ランナ ー二三塁。
 ここでなぜか二塁ランナーが大きく離塁する。
 えっ……。三塁ランナーはベースに張りついているのになぜ……。
 これが「男のコント」(以下、男コン)流か。そう思いつつ、MASAに指までさ して牽制の合図を送るエース。まんまとランナーを挟むが、MASAからの送球を受 けた遊撃本木に、ここで突然神の声が舞い降りる。
 「サードランナー、走った!!」
 ホームへ送球するために、体を入れ換える本木。
 しかし、そこにはただ風が、心地よい川風が吹いているだけだった。
 サードランナーはベースに張りついたまま。セカンドランナーは無事に二塁に戻る 。
 オールセーフ。
 本木〜!!
 エースの声が川原にこだまする。
 それにしても、あの神の声はどこから……。ふふふふ、けっこうやってくれるじゃ ないか、男コン。
 そんなこともあり、絶対に勝たなければいけないゲームで初回にいきなり2点を献 上。うーん。
 そして男コンのマウンドには、どことなく阪神の久保田を思わせる若いピッチャー が上がる。
 力感のあるフォームから投じられるストレート。かなり速い。今まで対戦してきた 相手では、3Aで投げた経験があるという白人投手は別格として(1安打しかできな かった)、WINS15年強の歴史のなかでも、30指に入る速球派ではないだろうか( 30指って……)。
 だが、今日はWINS唯一の元本格硬式野球人・本木もいるし、この時点で三冠王 のバカバットもいるし、シュアな打撃を誇るスターウォーズ軍団総帥・大久保もいる 。
 まるっきり打てないってこたないだろう、とタカをくくっていたが、これが打てな い。3回二死まで4三振、出たランナーは死球のエースだけ。
 ひょっとして、ノーヒットノーラン……!?
 試合後のものすごい苦い酒が頭に浮かぶ。
 と、ここでWINSのポテン王にして駄走り王・ゴローが、まんまと敵失で出塁。

 案の定、盗塁を重ね相手の送球ミスも誘い、駄走りに駄走ってホームイン!!
 よくやった、ゴロー!!
 これでノーヒットノーランはなくなった。
 ほっとするWINSナイン。
 さらに4回表(だと思う)、男コンの攻撃。一死二三塁というピンチに鋭いライナ ーが一二塁間を襲う。
 球場にいた誰もが「抜けた!」と思い、そのうちの半分が「抜かないで〜!」と思 ったその瞬間。
 正面および半径50センチメートルほどの打球には強いが(それで男の終着駅=ファ ーストのポジションを長年にわたって死守してきている)、前後左右50センチ超の打 球には最近めっぽう弱くなっていた現“浮動(不動あらため)の四番”が、右ななめ 上に跳躍。
 めいっぱい伸ばした逆シングルのファーストミットが、曇り空と重なる。
 その先に吸い込まれる白球。
 超ファインプレーと言っていいだろう。
 ここでも、なぜかふらふらと離塁していたセカンドランナーが、戻る気もなくアウ トでゲットツー成立。
 流れはWINSに大きく傾いた。
 その裏。その流れのままに先頭のキャプテン中泉が、エラーときわきわの遊撃内野 安打で渋く出塁。続く本木の微妙な当たり損ないをキャッチャーが野手選択。ノーア ウト一二塁。逆転のチャンスが訪れた。
 ここで、待ってましたバカバット。四番マツ。
 期待に応え、本日のWINS初といえるクリーンヒットをレフト前に。しかし、当 たりが鋭すぎて二塁ランナー帰れず、満塁。
 1対3の2点ビハインド、4回裏ノーアウト満塁。
 相手は3回途中までノーヒットノーランに抑えられていた好投手。
 しびれる場面である。
 打席には、今季好調の打撃を買われ……たのかどうかクリーンナップに抜擢された 、エース古矢。
 その2球目。前打席の死球に続いて、またも頭付近に速球が襲う。
 金平ジム仕込みのスウェーバックで軽くかわすエース。
 オーケー、オーケー、気にしない。警戒してるのね、ピッチャー。
 と、またも内角攻め。よけるエースをあざ笑うかのように、変化する球。おいおい 、ここで内角からのスライダーかよ。やるなあ、男コン。しかし、ストライクゾーン を外れ、カウントはワンツー。
 そして運命の4球目がやってきた。
 バッティングカウント。ぐっと踏み込むエース古矢。
 しかし。
 またも投球は打者の頭に向かって飛んでくる。
 し、死ぬ……。
 今度はスウェーバックでかわすヒマもなく、もんどりうって倒れ込むエース。
「とべとべツチノコ!!(逆からはけっして読まないように)」
 さすがにマウンドにつめより、とても公の場では発表できない罵声を相手投手に浴 びせるエース古矢・47歳(血圧かなり高め)。
「おーい、リョースケ!! 三塁から指示出してるだろう、エースのタマとれって!!( とるならきっちりとれや、おう)」
 味方ベンチからも、男コン三塁手として出場しているサラダ若頭に野次が飛ぶ。
 確かな野党と呼ばれる男の声だ。なぜかカッコのなかまではっきり聞こえた。
 ワンスリー、と思ったが、投球はバットに当たっておりツーツー。
 しかし、相手としてはここでデッドボールにしておけばよかった。
 1球ボール、2球ファウルでツースリーからの7球目。
 外角高めの速球を鋭く叩く古矢。
 打球はあらぬ方向に飛んでいる。完全な振り遅れ、いや流し打ち。
 右翼ライン上に落ちる2点二塁打。
 3−3の同点だ。
 いや〜、気持ちいい。サッカーにも2点適時シュートがあれば……(W杯日本−豪 州戦)。
 続いて、さきほどの野次の張本人・杉丸がクリーンヒットで逆転。野次の余韻を引 きずらないよう、必死で打ったとみたが、どうか。
 逆転すれば、こっちの展開。満を持してストッパー本木投入。
 このリレーは相手チームにとってダメージが大きい。
 超遅球から速球派へという物理的な意味でも大きいが、なにより「あのピッチャー から3点しか取ってないのに、こんなピッチャーがうしろにいたのかよ……」という 精神的な打撃。
 うちもよくこの手でやられる。
 継投した時点では1点差という僅差だったものの、その後、勢いづいたWINSは 中押しダメ押しという理想的な攻撃で、終わってみれば9対3の快勝。
 じつに気持ちのいい試合である。
 しかし、男コンあなどるべからず。あわやノーヒットノーランという、あのときの ムードのままだったらどうなっていたか。
 初戦は勝ったものの、2戦目以降は……。まあ、先のことを案じても仕方ない。今 日の勝利を大いに喜びあおう。
 喜びあいすぎて、翌日も試合があることを忘れないように。
 忘れないように。
 忘れないように。
 あと、公式記録員ゴローよ。7回までの草野球。3点差以内で継投し、残り2回以 上をそのまま抑えたらセーブをつけてもよいのでは。そのほか、細かいところも一応 、WINS式で決めておくか。

(ペン=本紙エース古矢)

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