06/6/10チューナマヨッツ戦

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■6月10日チューナマヨッツ戦

新旧勢力 混然一体で快勝!

2006年6月10日(土) 大宮健保球場第8面 観客数 2人

(ウグイス嬢の声)
「四谷ウインズのスターティングメンバーを発表します」
1番キャッチャー大久保、2番レフト皿田、3番ショート福田、4番ピッチャー古矢(オオッの声あり)、5番ファーストマツ、6番サード杉丸、7番ライトムラケン、8番センター古作、9番セカンド山崎」

「本日の実況、解説にあの世から進藤康太郎さんをお呼びしています。どうでしょう、進藤さん。先発のラインナップをご覧になって」
「う〜ん、シンドウですっ! 古矢くんが4番、思い切った手を使ってきました。ここのところ、バイオリンが好調ですから(ほとんどの人には意味不明)、重責を果たしてくれると思いますよ。しかし、ウチの社員が少ないですねえ。どうなってるのかなあ、お〜い、経理部長」
「今日、経理部長はお呼びしてませんので……。ま、ウインズ的には新旧勢力をうまく使っていこうという意図が感じられるようですが、そのあたりは」
「ややっ、長嶋さん。いやあ、どうもおひさしぶりで。その節は……(声が遠くなる)」
「……ちょっとあの世へ席をはずされたようですが。さて、そろそろプレイボールの声がかかるようです」

(1回表)
古矢、四球など制球が定まらずプチ不調。1点を献上。

「初回、チューナマヨッツが1点を先制しました。古矢、ややコントロールに苦しんでいる印象がありますが、進藤さん」
「そうですねえ。彼はちょっと気ムラなところがありますからね。会社にも、いるんだかいないんだか。そのへんがどうなってるのかなあ。お〜い、経理部長」
「だから、呼んでませんってば。さて、チューナマヨッツの先発マウンドには板倉が上がるようですね。超軟投派ですが、意外にタイミングがとれず、打ちあぐむ場面も目にします。バッターの目からみると、どうなんでしょう。進藤さん」
「板倉……板倉……。おおっ、板倉さんね。え〜と、郵便番号○○○−○○○、住所が東京都○○区○○町○○−○○、電話番号は○○○−○○○○、たしか○○大学を○○年に卒業して……」 「ウインズ、初回の攻撃です」

(1回ウラ)
いきなり1番大久保が右中間を抜く3塁打、続く皿田も左前に弾き返して1点。さらに1点を追加し、逆転して1回を終了。

「いや、それにしても大久保はバッティング好調ですね」
「いやあ、どうもどうも。はい、はい。いや、その件は片山くんとも協議したんですが(電話中)」
「ウインズ、逆転。1点差で2回を迎えます」

(2回表)
古矢、依然としてコントロールに苦しむ。3点を献上。チューナマ再逆転。4対2。

「古矢、苦しんでますね。どうでしょう、進藤さん。チューナマは右狙いを徹底しているようにも見えるんですが」
「そうですね。古矢くんの球を右へ打とうとすると、バットはこう、インからアウトへ振り抜かないとダメですね。こう、インからアウト。わかりますか。インっからアウトっ! バットないかなあ。お〜い、大熊く〜ん」
「ウインズ、2回ウラの攻撃です」

(2回ウラ)
古作、大久保が四球を選んで、2死1、3塁も皿田がレフトフライに倒れ無得点。

「え〜、進藤さんが急に『社に戻る』といわれて中座されました。そこで、急遽、磐田からウインズの元キャプテン、出田さんにお越しいただきました。よろしくお願いします、出田さん」
「どもっ出田です」
「どうでしょう、出田さんがキャプテンを務めていらした当時のウインズと、いまのウインズをお比べになって」
「う〜〜〜ん……違うんだなあ、違うんだ。ま、ベースボールっちゅうのは、出たランナーをひとつでも先の塁に進めるゲームら?」
「ら?」
「……ああ、遠州弁です。スンマセン。だから、打席に立つっちゅうことは9人をぜんぶ敵に回して、たった一人で立ち向かう。男の仕事なんです。そして、ホームを出て、敵をかいくぐって塁を進むっちゅうことです。そして、またホームに帰ってくる。ホームを出てホームへ。家を出て、また家へ。アメリカ人はそうやってベースボールをつくったんだよ。そうら?」
「ら?」
「だからね、ちょっと聞いてくれ。いや、聞いてくれ。ビールもう一杯」
「……チューナマ、2点リードで3回表の攻撃です」

(3回表 チューナマ無得点)
(3回ウラ ウインズ無得点)
(4回表 チューナマ無得点)
(4回ウラ)
マウンドにはチューナマ2番手、メガネ君が上がる。杉丸が遊失、ムラケンが四球で無死1、2塁も古作、山崎が連続三振で2死。つづく大久保の打球もふらふらと一塁後方に上がる小飛球。これを相手一塁手が楽勝で落下点に入っていながら捕球できず、ウインズ2点を挙げて4対4の同点に追いつく。

「さあ、これでわからなくなってきました」
「何が?」
「え?」
「何がわからなくなってきたかっちゅうことだよ」
「(小声で)だから飲ましちゃダメだって。え? もう5杯も飲んじゃったの?」
「だから、あなたは、ベースボールがわかったことがあるのかっちゅうの。わからなくなってきたって……ベースボールはわからないものなんだよ。俺はね……」
「はい」
「ちょっと便所」
「……チューナマ、ウインズの今季第4戦、ふりだしに戻って5回を迎えます」

(ウグイス嬢の声)
「ここでウインズ、守備の交代をお知らせします。ピッチャー古矢に代わりまして島袋、ファーストマツに代わりまして杉本、サード杉丸に代わりましてユカリ、センター古作に代わりまして村上、ライトムラケンに代わりまして小笹、レフト皿田がショートに入り、レフトゴロー」

「さあ、試合をふりだしに戻しまして、ウインズ、大幅な選手の入れ替えを行いました。新人の島袋がマウンドに上がりました。さて、どんな投球を見せてくれるか。ゴローと皿田を残したということは、ピッチングスタッフに2重、3重の保険をかけたとみていいでしょうか。どうでしょう、出田さん」
「……zzz」
「寝ちゃったよ。弱ったなあ。出田さん、出田さんっ!」
「……うん? ……ベースボールは素晴らしいっちゅうことだよ。そうら?」
「ら?」
「zzzzz」
「……さて、5回表、プレイボールがコールされました」

(5回表)
島袋、やや制球に苦しみ、ランナーを出すも無失点に抑える。
(5回ウラ)
1死後、島袋が中前打、杉本が中失で1、3塁。ここでひさびさに復帰したユカリが右中間に2点タイムリー2塁打。ウインズ打者一巡の猛攻で、3点を勝ち越してスコアは7対4。

「さあ、同点後、初の得点はウインズに入りました。残すところ、あと2回。ここでゲストに観客2名のうちの一人、皿田修平さんをお迎えしました」
「や、どうも。皿田です」
「よろしくお願いします。皿田さん、残すところ、あと2回。勝敗を分けるポイントはどこでしょう」
「まあ、マウンドの島袋くんだねえ。彼はおそらく沖縄出身だろう。私は何度も沖縄に足を運びましたがね、戦後日本の繁栄は沖縄の犠牲のうえに成り立った。これをみんな、忘れとるんじゃないか」

「はあ?」
「本来、琉球王国として独自の文化を育んでおった沖縄をだよ、薩摩藩が武力で乗っ取った。琉球人は武器を持つことを禁じられたわけだ。そこから空手が発祥した。だいたい、いまの日本人で沖縄戦のことを憶えてるやつがどれだけいるか。あなた、どう思う?」
「沖縄戦……ですか?」
「そう、沖縄戦だよ」
「……(咳払い)チューナマ、6回表の攻撃です」

(6回表)
島袋、塁上をランナーで埋められるも1点でしのぎ切る。スコアは7対5の2点差。
(6回ウラ)
チューナマは速球派タオルくんが登板。ウインズ無得点。

「さあ、いよいよ迎えました最終回、ここからは解説者ぬきで放送いたします。マウンドには島袋。ここまで2回を投げて1失点。2点差を守りきれるでしょうか」
先頭打者フォアボール。
「おおっと、いけません、島袋。先頭打者を歩かせてしまいました。ノーアウトランナー1塁です。さあ、ここはどんな策が考えられるでしょうか」
「続くバッターは土をならして左打席に入ります。島袋、セットポジションから第1球は……ボール。ボールが先行しました。さあ、苦しいところ、投げました。第2球はファウル、ファウル。3塁側スタンドに高〜い飛球」
「ベンチに下がったウインズナインも固唾をのんで見つめています。島袋、第3球を、投げた。打ちました」
「鋭い打球がライト線……取った! 杉本、取りました! あわや一塁線を抜けるかという痛烈な当たりを、横っ飛びジャンピングキャッチ。スーパープレイです。すごいプレイだ。ナインから声がかけられます。ベンチも総立ちで手を叩いています。思えば、ウインズの一塁は常にこの男が守ってきました。いまの当たりが抜けていれば、試合の行方が一気に混沌とします。それを防いだスーパープレイ! ウインズにこの人あり! ……おおっと、残念ながら放送時間の終了が近づいてしまいました。スーパーキャッチの余韻が残る、ここ大宮健保球場から、さようなら」

(本紙:杉本)

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