18/7/22 カーテシィ戦
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■7月22日(日)カーテシィ戦
「もうヨンスポはしばらくないだろう」
試合間隔もあき、ほっとひと安心しているWINSナインも多いと思う。しかし、そんな心の隙間にそっとしのびよるのが、夏の誘惑であり、『ヨンスポ』である。
♪夏は心の鍵を 甘くするわ ご用心
かつて、桜田淳子はそう歌った。あの頃の歌謡曲は本当によかったが、今日はその話ではない。2018年7月22日(日)、光が丘公園野球場、VSカーテシィ。
長いあいだ日本の夏を生きてきたエース古矢が「こんな暑い日に野球をするのは人生ではじめてかもしれない」と思うほどの灼熱の日。
待ち合わせたわけでもないのに光が丘駅で偶然いっしょになったエース古矢、高校の同級生ウサミ、事務局Gことゴローの3人は、グラウンドまでの果てしなく続くように思える道のりを「アヂー、アヂー、アヂー」と、言ってもなんの役にも立たない言葉を大人げなくくり返しながら歩いていた。
エース古矢59歳、同級生ウサミも当然ながら59歳、ゴローが51歳。
そこに新装なった更衣室から出て来たカトー選手が加わった。ご存じのようにカトーはWINS現役最年長の60歳。
行き先は野球のグラウンドではなく、火葬場でもいいのではないかと思われるような年齢4人の死の行進。しかし、本日WINSの参加人数は9人ジャスト、這ってでもグラウンドにたどり着かなくてはならない。
一方で希望もある。今日は、WINS最年少の19歳(もう20歳になったか)タツキ選手、その友達ヨシミ選手、およびササザキ軍団のなかでもっとも野球力の期待できる屋比久選手の参戦があり、投手はそのタツキ選手に任せ、いつもは老体にムチ打って捕手をつとめているゴローも、屋比久選手にキャッチャーを任せられるのである。
しかしベンチでタツキ投手がこんなことをつぶやいた。
「今日、2試合目なんっす」
ここで間をおいてはいかんと、監督不在の本日代理をつとめるエース古矢がすかさず言った。
「えっ、でも、今日はタツキくん、先発完投だよ」
ここでゴローあたりだと「えーっ」とごねるところだが、さすが心意気のあるワカモノ。
「大丈夫っす」
これでひと安心。いつも『ヨンスポ』に写真の少ないゴローを撮ろうと、ウォーミングアップ中を狙ってカメラを構えると、背後に迫るカトー選手。
さらに左隅からウサミが近寄る。
おおっと、これは……エグザイルのあれ、なんだ、トルネードダンス? チューチュートレインダンス?
しかし、先ほども記したが、ゴロー51歳、カトー60歳、ウサミ59歳。撮っているエース59歳。足しても意味はないが、全員の年齢を足すと229歳!!!! 書くのも恥ずかしいが、これはエグザイルではなくジジザイル、というよりジジーガイル、いやジジーガイスギではないのか。しかも、当然のごとく動きはまったくない。
そんなこんなで、ようやく試合がはじまった。
先攻はカーテシィ。タツキ投手が期待通りのピッチングで、内野安打1本に抑え無失点という上々の立ち上がり。
しかし、WINSの裏の攻撃があっさりしていた。ヤングパワーのひとり石原選手が、暑さのせいかなんだか妙に力の入らないスイングで三振。ヨシミ選手も三振に倒れ、三番タツキもライトフライ。
2回表もタツキ投手があっさり三者凡退に打ち取るものの、ライトのカトー選手がなかなか帰ってこない。
「レフトのほうが歩く距離が少なくていいんじゃないですか?」島田がそんな声をかける。
2回裏。敵失で出塁した屋比久が、本日キャッチャーという重労働ポジションにもかかわらず、果敢に盗塁を決め、さらに重なった敵失のあいだにホームに返り、先制。
3回裏も、ウサミ久々のヒットから石原が四球を選び、無死一二塁のチャンス。ここでヨシミ選手がレフトに特大の当たりを飛ばすが、惜しくもファール。そしてそのあと三振。期待されたタツキがまたしてもライトフライに倒れ(カーテシィーの助っ人ライト、いい守備を随所に見せていた)、屋比久はまたも敵失で出塁したものの、島田が倒れて無得点。
うーん。
そして4回表、それまでほぼ完璧な投球をしていたタツキが突如乱れる。
しかし、原因は明らかだ。
先頭にヒットを許したものの、続く打者は女子選手ふたり。ここで、タツキの腕がゆるむ。このチームの女子選手に痛打された経験の多いゴローならいつも通りの投球をするところだが、初めて対戦するタツキ投手にとっては、勝手のわからない相手ではあった。
まず最初の女子選手に死球。これで無死一二塁。さらに続く女子選手は、カーテシィーで采配をふるう六角アスカラングレー(本名・六角明日香)だ。なんと、サードの頭上をライナーで越えるヒット!
これで無死満塁。
動揺したのか続く男子選手に押し出し四球で同点、なおも無死満塁。
「前進守備、ホームゲッツー!」
監督代行、ファーストを守るエース古矢が叫ぶ。
じつは古矢、三塁ランナーが女子(しかもそこそこな年齢)なのを見て、もしファーストゴロが飛んで来たら、まず打者走者にタッチして、封殺プレーにはならないが、そのあとホームに投げようと決めていたのである。
そこにおあつらえむきのファーストゴロ!
しかし、打者はアウトにしたものの(じつはこのタッチも怪しかったのだが)、ホームへの送球が低くなり、生還を許してしまう。
これで、さらにタツキ投手の……というか、守備のリズムが乱れた。それまでいい守備を見せていたショート石原の三塁走者を刺そうとした送球が大きく逸れるなどして、この回まさかの5失点。
それでも、その裏、代わったカーテシィ投手の乱調に助けられ、押し出しで1点返したあとの満塁のチャンスに、とうとう本日期待の二番ヨシミがレフトに痛烈な二塁打、さらに三番タツキもあわやホームランという当たりで、すかさず5点を取り返し、6−5と再逆転。
だが、もうWINSのジジザイルたちは、勝ち負けより生き死にの問題になっている。
イニング間に水道で顔や腕、首筋を冷やすものの、体の奥底から湧き上がる怖いほどの熱。若いはずの石原も、なんだか青い顔をしているように見える。
大丈夫なのかオレたち。
それでもなんとか、5回表裏を終了、この時点で7−6とリード(カーテシィーのスコアブックでは8−6)、6回表のカーテシィの攻撃で、またも女子選手六角アスカラングレーにサードの頭を越されるヒットを打たれる(本人曰く「なんだか、自分で怖い〜」)など2失点したところで、時間切れ。
規定により、ルール上はWINS勝利だが、カーテシィの勝敗表では8−8の引き分けということになっている。まあ、それも草野球。
お互い、怪我もなく試合ができてなによりである。
気になるのは、試合後、エース古矢、ゴロー、カトーのジジザイル3人が更衣室でシャワーを浴びているあいだに、ほかのナイン全員が帰ってしまったことである。
ええーっ。
その後、残ったジジザイル3人は、近所の『和民』で、ランチタイムを越え、15時の夜メニューになっても居座り、生きて帰れたことを喜びあった。ふだんは、定食を食ったら5万円ほどを置いて「あとはよろしく」とさっさと帰るカトー選手も、ボトルを2本も入れてしこたま飲んだ。
ちなみに、ウサミはどこへ行ったのだろう。
その日、WINSの試合とほぼ同時刻に、母校である都立国分寺高校が神宮で西東京大会の準々決勝に臨んでいた。相手は、WINS本木選手の母校である国士舘。2−4の惜敗だったようだが、あわてて神宮に駆けつけていたりして、シカンの応援団にカツアゲでもされていないか、ウサミの安否が気づかわれる。
●ペン=エース古矢
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