06/7/22ポパイ戦

<試合結果> <スライドショー> <その後>
■7月22日ポパイ戦

 たまにはあっさりいこう。
 何をどうまちがえたのか、この試合、初対戦の相手は国立市の大会で準優勝したチームだという。
 どうしてそういうブッキングをしてしまうのか。もちろん、強いチームと当たるのはいい。むしろ楽しい。しかし、それはあくまでこちら側の論理である。
 大人たるもの、相手の立場になって考える、それが重要だ。
 なんで休みの日に大人が大勢集まって、四谷WINSなんていう弱いチームとやらなゃいかんのよ。
 強豪チームならきっとそう思うはずである。
 亀田の試合のブッキングも難しいが、草野球のブッキングも難しい。
 まあ、そういう難しい状況のなかから思わぬことが起こって楽しくなってしまう、そんなこともあるのだが……。
 まさに、この日がそれだったのかもしれない。
 ドキドキワクワクで迎えたゲーム。
 相手は6人だった。
 そうか、そういうことだったのか。
 以前、対戦を頼んだら、助っ人を頼まれたと勘違いしてたったひとりでグラウンドにやってきた某テレビ局のプロデューサーがいたが、あのとき以来の少人数。
 こうなるとさすがに、いくら強豪チームとはいえ負けるわけにはいかない。
 そんなこと言っても負けるときは負けるが、負けるわけにはいかない。
 こっちは11人来てるし。
 そしてプレイボール。
 あっさりいこうと言ってるわりに、いつものように前ふりが長い。
 相手が6人ということもあって、1回表はエース古矢がなんとか3者凡退にきってとる。なにしろ6人ということは、塁が埋まりすぎると透明ランナーを出さなければならなくなるかもしれないのである(そんなことはない)。
 一応言っておくと、サードを守る「確かな野党」のところに二度ほど打球が飛んだが、なぜか野党ぶりは発揮せず、みごとに打球をさばいた。
 そしてその裏。
 打撃好調のトップバッター大久保がファーストゴロ。
 二番「確かな野党」の打球は鋭くセンター前に飛び、誰もがヒットと思った瞬間。

 敵側のセンターに入っていたわがチームの「くまちゃん」(byのぞみ)が、今まで見たこともないような動きで、ライナーを地面すれすれでキャッチしてしまった。

 え〜っ!!
 天を仰ぐ杉丸。涙目でグラブを差し上げるカズシゲ。
 人生いろいろ、会社もいろいろ。とりあえず結果がナイスプレーならオッケーだ。

 けっきょく二死ランナーなし。
 そしてこの日、三番に抜擢されたエースが打席に入る。1球見逃したあとの2球目。力まかせにスイングすると、案の定ボテボテの三塁ゴロ。
 二死走者なしである。すぐにマウンドにのぼらなければならない、先発投手である 。47歳である。降圧剤も愛用中だし、締め切りもとっくに過ぎている。
 ふつうならそこであきらめるところだ。
 しかし、この男は違った。
 すぐには加速できないが、途中から全力疾走。じっさいにはスピードはまったく出ていないが、そのバタバタとした全力疾走ふうが、相手野手をあわてさせるのだ。
 まんまとエラーを誘い、一塁セーフ。
 しかも、それだけで終わらない。
 ここは「ターニングポイント」ですよ、多昌さん。
(……それにしてもなんなんだ、日テレ野球中継の「ターニングポイント」。ただのチャンスやピンチを「ターニングポイント」と言ってるだけなのでは)
 まあ、いい。
 二死一塁で、次打者はこれまた打棒好調の四番マツ。
 さあ、どうする。
 ここは、外野の上やあいだを抜いても打球が道路に出てしまうために、三塁打にはならずエンタイトルツーベースの多い谷保第三球場。
 もちろん、200%盗塁だ。
 ピッチャーであることも忘れ、盗塁敢行。その後、絵に描いたようなマツのエンタイトルツーベース。
 二死から先取点。
 素晴らしい。
 そこからWINSの調子こき打線が爆発する。
 浮動の四番杉本が中安、ユカリ遊失、ゴロー左安、クルクル丸一失、ムラケン中安、そして打者一巡して、大久保二塁打。
 一挙7点。しかも二死から。ホントはエース古矢のサードゴロで三者凡退失点ゼロだったはずなのに、7点。相手ピッチャーはたまらないだろう。なにしろ自責点はゼロだ。
 その後もWINS調子こき打線は、たったひとりをのぞいて調子こきまくり。
 しかし、それもこれも、あの1回の「ターニングポイント」があったからこそだ。
あれがなかったら、試合はどう転んだかわからない。それが野球というものである。

 試合が終わりかけた頃駆けつけた、監督候補ファミリー。一家の小黒柱が超久々の3安打と聞き、妻が言う。
「えー! 雪が降るね」
 娘ののんちゃん(=のぞみ)が異を唱える。
「嘘つかないで! 雪が降るのは冬だよ!」
 しかし、母は強い。
「そうよ。だけど、あり得ないことが起きたときはそう言うの」
 納得してなかった様子の娘だが、打ち上げ会場のさかえちゃんではしっかり「明日は雪が降るんだって!」と親父を皮肉っていた。わはは。
 あ、忘れてた。
 その超久々3安打男。
 さかえちゃんでそっと打ち明けたんだった。
「じつは今朝……立川のバッティングセンターに行ってきたんですよ」
 そうだよ。その言葉をエースはじめナインは待っていたのである。結果が出なけりゃ、なんかせい。やればできるんだから。いや、どうかな。
 クルクル丸もテーブルの向こうで「オレも行きましたよ」と言ってたような。その甲斐あって、彼も本日3安打。
 そこで何か言った本日唯一の無安打男。よく聞こえないが、WINSの断言派ユカリくんが、それに応えてきっぱりと述べる。
「ミヤタくんの話は、なんかつまんないんだよね」
 わはははは。
 ついでにこんなことも。
「みんな、今日はエースの球のほうがゴローより速かったとか言ってるけど、ゴローのピッチングは速いとか遅いとかじゃなくて、だらしないんだよね」
 ゴローが反論する。
「オレだって友達ぐらいいますよ! 野球には誘わないだけですよ! もう〜、だいたい友達がいるほうがエライっていう、その考えがまちがってるんですよ! 友達なんかいなくたっていいんですよ!」
 じゃ、いないんじゃないか。だいたいその反論はユカリくんの話はかみ合っているのか。
 まあとにかく、今日もさかえちゃんの冷えた瓶ビールと竹輪がうまい。

(ペン=エース古矢)

戻る